いつかの雨宮

少し前に、取材の帰りに雨が降り出したことがあった。
初対面の男性の編集さんが、バッグからさっと取り出した折りたたみ傘が、
あんまりいい生地の傘だったので、
(折りたたみ傘は軽さ重視で、ペラペラした生地のものが多いですよね)
「それ、どこの傘なんですか?」
と訊いてしまった。

傘屋伝七のもので、新宿伊勢丹メンズ館にあるが、

日本橋のお店の店先で見せてもらうのも面白いですよ、と言われ、
住所を見ながら行ってみたら、
お店じゃなくて、普通の配送事務などをしている会社だった。
わたしが勘違いしただけで、他のところにお店があったのかも……と思いつつ、
傘を見せてもらえるか訊いてみたら、
「どうぞどうぞ」と通してもらえた。

わたしが見たい傘は、婦人用の折りたたみ傘だったのだが、
もともと、メンズの傘が中心のお店で、
「それは見本がないんですよね……」とのこと。
でも、伊勢丹メンズ館にも、婦人傘はたぶん、ない。

「晴雨兼用と書いてあったんですけど、これ、日傘だけど雨も大丈夫、っていう傘なのか、雨傘だけどUVカットなのか、どちらなんでしょう?」
と、いちばん訊きたかったことを訊いてみると、
「うちは、UVカットは基本的に全部の傘にかけるんです。これは、本当にどっちでも使ってもらっていいですけど、雨傘です」
と教えてくれ、在庫を探してきてくれた。

その傘は、編集さんが持っていた傘の半分以下のお値段の、小さめの傘で、
メンズの傘もお洒落でいいなぁ、と思ってもいたけれど、
なんというか、こういう流れができたら、もうこの傘と縁があったような気がしてしまい、
「ここで買えますか?」と訊いて、その場で買って、持って帰った。

そのあと、夜に雨が降った。
しっかりした生地の傘をさすのは、気分がよかった。

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